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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)3648号 判決 1954年10月22日

主文

原判決及び第一審判決を破棄する。

被告人を免訴する。

理由

弁護人松下宏の上告趣意について。

所論は本件に適用された佐賀県規則第三六号佐賀県籾摺業者取締規則は食糧管理法施行令一三条の委任の範囲を逸脱した無効のものである、仮に食糧管理法一三条に基くものとすれば大赦により免訴されるべきである、というに帰するのであるが、同規則は一条において籾摺及び籾摺業者の意義を定め、二条において籾摺業を営もうとする者の届出義務を定め、三条四条において籾摺業者の籾摺台帳の備付、記載、報告保存等及び票箋を包装口縄に結び付けるべき義務を定め、五条に提出書類の経由手続を定めたものであって、食糧管理法九条同法施行令一三条、同法一三条同法施行規則三一条(昭和二五年九月一一日農林省令第一〇一号による改正前のもの、以下同じ)によれば佐賀県知事が所定事項について規則を制定し得ること明らかである。

しかして所論規則三条に規定する本件報告義務に関しては前記食糧管理法一三条同法施行規則三一条二項に依拠するものと解するを相当とする。蓋し法九条令一三条に定める委任事項は、主要食糧の消費又は使用の合理的規整を図るため特に必要があると認めるときという制約があるにせよ、主要食糧の加工業者等に対する加工等に関するものを含め甚だ広汎な範囲に亘るものであるけれども、主要食糧の管理に必要な調査を行うために必要と認められる報告義務については、法一三条規則三一条が特別の定めをしているのであって、その限りにおいては法九条令一三条を排除するものといわねばならない。このことは法一三条違反について法三三条が法九条違反に関する法三一条よりも特に軽い刑罰を定めているところからも窺い知られるのである。してみれば、所論規則前文の食糧管理法施行令一三条に依拠する旨の記載にかかわりなく本件規則三条の報告義務については食糧管理法一三条同法施行規則三一条二項に基くものと解すべきである。

ところで右のように解する結果、本件佐賀県規則三条違反の公訴事実は昭和二七年政令第一一七号大赦令第一条第八六号により大赦せられるべきものである。右と異る見解に出て、一審判決を維持した原判決は法令の解釈を誤り判決があった後に大赦があった事由を看過するという違法があることとなり、一審判決については判決後大赦があった場合にあたり、いずれもこれを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるのであって、所論は結局理由あるに帰する。

よって刑訴四一三条但書四一一条四一四条三三七条三号に則り原判決及び第一審判決を破棄し被告人を免訴すべく主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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